2024/09/09
今から十年ちょっと前のことです。
競泳の北島康介選手が、平泳ぎの新記録を次々と塗り替えていました。
2004年アテネオリンピックでは100m・200m平泳ぎで金メダルを獲得。
2008年北京オリンピックでも両種目で金メダルを獲得し、競泳での日本人唯一の2種目2連覇を達成しました。
1.北島選手はレース中のどの瞬間に一番集中していたのか
そんな北島康介選手。
100mを泳ぐ時、どの瞬間に一番集中しよう心がけていたのでしょうか。
スタートから50m地点まででしょうか。
50m地点から90m地点まででしょうか。
それとも、90m地点からゴール地点まででしょうか。
正解は・・・
90m地点からゴール地点までです。
いや、正確には、90m地点からゴールをして、電光掲示板を見るまで、です。
これは、日本競泳チームを指導していた脳神経外科医の林成之氏の指導を取り入れたものです。
2.脳はゴールが見えた瞬間に力をセーブする
林成之氏は次のようなことを本の中で記しています。
「脳はゴールを意識した瞬間に力をセーブし、エネルギーを節約しようとする。」
あとちょっとで勝てる!あとちょっとでゴールだ!と思った瞬間に脳の血流が落ちるというのです。
これは、スポーツの世界でよく見られる光景です。
例えば、サッカーワールドカップ最終予選のドーハの悲劇。
あと、少しでワールドカップ出場だったにも関わらず、後半ロスタイムに相手選手に同点弾を決められ、日本のワールドカップ出場はかなわぬ夢となりました。
最近では、野球プレミア12の準決勝韓国戦。
先発の大谷選手が素晴らしいピッチングをし、誰もが日本の勝利を確信しました。
しかし、大谷選手が降板した途端に、日本投手陣は撃ち込まれ、まさかの大逆転を許してしまいました。
途中まで勝っていたのに・・・
途中まで完璧だったのに・・・
最後の詰めでコケてしまった。。。
これは、省エネしようとする賢い脳の機能から説明することができたのです。
3.ゴールデンタイムを意識する
この脳の機能を理解した北島選手は、90m地点からを「ゴールデンタイム」と考えていたそうです。
90mから先が、一番自分が輝く時間帯、最も集中する時間、ゴールデンタイムだ、と考えていたそうです。
さらに、ゴールを先延ばしにすることによって、脳の血流を下げないようにしていました。
どういうことかというと、壁にタッチした瞬間をゴールと考えずに、壁にタッチし電光掲示板を見た瞬間をゴールと捉えることにしたのです。
これによって、ゴールが先延ばしにされ、レース途中に脳の血流が下がることを防げます。
4.仕事の中でもいかせるゴールデンタイム
私は現在、工事現場で監督業を行っています。
工事がもうすぐで終わる・・・
そんなときに限って、施工ミスやケガが発生するのです。
工事が終盤にかかると、「もうすぐでこの現場も終わりだ。」という意識がどうしても働いてしまいます。
これが事故やミスの原因になります。
この「もうすぐで終わり」というのは一日の中でも起こります。
以前、レッカー作業を行っていたのですが、その日は完璧なまでの作業を職人さんがしてくれていました。
しかし、最後の最後に致命的なミスを犯してしまったのです。
私自身も確認ができていませんでした。
「最後ぐらい、確認しなくてもここまで完璧だから大丈夫だろう。」
と考えていたのが甘かったのです。
結果、最後の2つの荷物を全く別の場所にレッカーで移動してしまったのです。
その失敗があってからは、工事終盤に差し掛かるといつも以上に職人さんに注意喚起を促す声をかけるようになりました。
「施工が終わるまで、が工事ではなく、施工が終わり道具を片付け車に乗るまでが工事です。最後まで気を引き締めていきましょう。」
こんな話を朝礼でするようになりました。
教員だった頃には、次のような話を子どもたちにしていました。
「3学期はどうしても、一年の終わりが見えて、今までできていたこともできなくなってしまいがちです。でも、3学期こそが一番大事なのです。」
そして、北島選手のゴールデンタイムの話をした上で次のように話しました。
「3学期は、皆さんにとってゴールデンタイムです。一年のうちで一番輝く時間です。3月が終わるときには、なんていい一年だったと思えるようにこのゴールデンタイムを過ごしていきましょう。」
5.まとめ
上手くいっている時こそ、
最後のゴールデンタイムを意識する
ゴールを先延ばしして設定する
そうすればきっと自己最高の結果が待っています。
この記事が皆さんの役に立てれば、幸せです。